海洋都市イシュワルド。温暖な気候を持つ世界有数の大都市である。 ここは、そんなイシュワルドのほぼ中央に位置するレミュオール地区にたたずむ小さな一軒家。 そこで暮らす女性は、街でも評判の『怪しい女性』ティコと、その弟子ルヴェル。 今日もいつもと同じイシュワルドの一日が始まるのかと思っていたある日のこと、 ルヴェルは自分の「へそくり」が消えていることに気づきます。 わがままで金使いの粗いティコと同居する身として、勝手に人の金を使われまい、と思い自室の本棚に隠しておいた、なけなしのへそくり10000£が忽然と姿を消していたのです。 貧相な家に入る泥棒もいない。思い当たるフシは一つしかありませんでした。同居人のティコです。 すぐさま、そのことをティコに問い詰めましたが、弟子という立場もあり(弟子にはなりたくなかったのですが、勝手に弟子にさせられたのです) 師匠に逆らえないルヴェルは、ただただ枕を相手に泣きじゃくるのみでした。 しかし、ティコの悪事はそれだけではありませんでした。 なんとなんと、彼女は銀行から借金をしてきていたのです。 ルヴェルのへそくりをその返済の一部にあてたものの、残された金額は、一般市民にとっては巨額極まりないものでした。 さすがに堪忍袋の緒が切れたルヴェルは師匠相手に強く出ます。お金は働いてちゃんと返すのだ、と。 いつもなら弟子をこきつかい、借金返済を済ますティコでしたが、今回ばかりは返済額が大きすぎる… ため息を一つつくと、少しは反省したのか、ティコはしぶしぶ店のカウンターに座ります。 「しょうがないわねぇ…手っ取り早く商売でお金を集めるから、家にあるもの持ってきなさい。」 レミュオールの錬金術師は、ふてくされた顔でそう言うと、弟子を睨みつけます。 ティコのアトリエ本日開業。彼女の手から創られるものは、巨万の富と繁栄の華。 |